給与の遅配・未払いが起きたら?労働基準法の罰則と対処法を解説

給与計算実務

「給与が振り込まれていない」「支払い日に全額が支払われなかった」——これは労働者にとって深刻な問題であり、会社にとっても重大なリスクです。給与の支払いは労働基準法で厳格にルールが定められており、違反した場合は罰則が科せられる可能性があります。

この記事では、給与の遅配・未払いが起きたときの法律上のルールと対処法、会社側・従業員側それぞれの視点からの対応策を解説します。

給与支払いに関する労働基準法のルール

労働基準法第24条では、賃金の支払いについて以下の「5原則」が定められています。

  • 通貨払いの原則:現金(または本人が同意した口座振込)で支払う
  • 直接払いの原則:労働者本人に直接支払う
  • 全額払いの原則:控除が認められているもの(税金・社会保険料・労使協定に基づくもの)以外は全額支払う
  • 毎月払いの原則:毎月1回以上支払う
  • 一定期日払いの原則:特定の日を決めて支払う

これらの原則に違反した場合、30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法第120条)。

未払い賃金の罰則

故意に賃金を支払わない場合は、より重い罰則が適用されます。労働基準法第24条・第120条のほか、悪質なケースでは第5条(強制労働の禁止)との関連で刑事告訴に至ることもあります。

また、退職した労働者からの未払い賃金の請求権の時効は3年(2020年4月以降)です。退職後も請求できるため、過去の未払いが後から発覚してまとめて請求されるリスクがあります。

遅延損害金(附加金)とは?

裁判で賃金未払いが認定された場合、裁判所は未払い賃金に加えて「附加金(ふかきん)」の支払いを命じることができます(労働基準法第114条)。附加金は未払い額と同額が上限で、実質的に2倍の支払いを命じられるリスクがあります。

また、退職した後に未払いが続いた場合には年14.6%の遅延損害金が発生する場合もあります(賃金の支払の確保等に関する法律)。

会社側が取るべき対応

給与計算ミスが発覚した場合

計算ミスによって給与を少なく支払ってしまった場合は、速やかに不足分を支払うことが必要です。次月の給与での調整ではなく、できる限り早期に差額を支払う姿勢が求められます。従業員への説明と謝罪も丁寧に行いましょう。

資金難で支払いが困難な場合

会社の資金繰りが厳しく支払いが難しい状況でも、給与の支払いを後回しにすることは法律違反です。労働者への誠実な説明と、支払い計画の明示が最低限求められます。会社が倒産等に至った場合は「未払賃金立替払制度」(独立行政法人労働者健康安全機構)を通じて従業員を救済する仕組みがあります。

予防策:給与計算のダブルチェック体制

給与計算ミスによる未払いを防ぐには、計算担当者以外の者が確認するダブルチェック体制が効果的です。また、給与計算ソフトを活用して入力ミスを減らすことも有効です。

従業員側が取るべき対応

まず会社に確認・催告する

給与が支払われない・金額が不足していると気づいたら、まず会社の給与担当者や上司に確認しましょう。計算ミスや振込エラーなどの単純なミスであれば、この段階で解決することがほとんどです。

解決しない場合:労働基準監督署への申告

会社に確認しても支払いがなされない場合は、労働基準監督署に相談・申告することができます。労働基準監督署は会社に対して是正勧告を行う権限を持っています。

少額訴訟・労働審判も選択肢に

未払い額が少額の場合(60万円以下)は少額訴訟、より本格的な解決を求める場合は労働審判を利用する方法もあります。いずれも弁護士への相談を検討しましょう。

給与計算の「過払い」が発覚した場合

反対に、誤って多く支払ってしまった場合(過払い)はどうすればよいでしょうか。過払い分の返還を求めることは可能ですが、給与から一方的に控除することは「全額払いの原則」に違反します。従業員の同意(書面で確認しておくと安心)を得た上で、次月以降の給与からの分割控除や返金対応を行いましょう。

まとめ

給与の遅配・未払いは、労働基準法違反として罰則の対象になるだけでなく、会社と従業員の信頼関係を大きく損なう問題です。担当者として、給与計算のミスを防ぐ体制づくりと、万一問題が起きたときの迅速な対応が求められます。

従業員からの問い合わせに対しては誠実かつ迅速に対応し、不明点は早めに専門家(弁護士・社労士・労働基準監督署)に相談しましょう。

※この記事の情報は2026年5月時点のものです。

この記事を書いた人

【運営者プロフィール】

▶ 2018年〜 介護系ソフトの勤怠・給与計算サポート業務
▶ 給与計算の資格を独学で取得
▶ 2022年7月〜2025年5月 給与奉行・法定調書奉行のコールセンター勤務
▶ 現在 独学で最新情報をアップデートしながら情報発信中

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