共働き夫婦でも遺族年金はもらえる?受給条件・金額・2028年改正をわかりやすく解説

給与計算実務

「遺族年金って、夫に先立たれた専業主婦がもらうもの」――そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

実際には、共働きの夫婦でも遺族年金を受け取れるケースはあります。ただし、条件が複雑で「もらえると思っていたのに受け取れなかった」という落とし穴も少なくありません。

さらに、令和7年(2025年)に法律が改正され、2028年(令和10年)4月以降は遺族厚生年金の制度が大きく変わります。

本記事では、共働き夫婦を念頭に置きながら、遺族年金の仕組み・受給条件・年金額の考え方・2028年以降の改正内容を順を追って解説します。

1. 遺族年金は2種類ある

遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があります。亡くなった方の年金加入状況によって、どちらか一方、または両方が支給されます。

遺族基礎年金遺族厚生年金
基となる制度国民年金厚生年金保険
主な対象者子のある配偶者・子配偶者・子・父母・孫・祖父母
自営業者の遺族×
会社員・公務員の遺族△(子がいる場合のみ)

会社員・公務員として厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。さらに子どもがいれば、遺族基礎年金も上乗せされます。

2. 受給の大前提:亡くなった人の要件

遺族年金を受け取るには、まず「亡くなった方」が一定の要件を満たしている必要があります。

遺族基礎年金の場合(次の①〜④のいずれかに該当)

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所があった方が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
  4. 老齢基礎年金の受給資格期間(25年以上)を満たした方が死亡したとき

遺族厚生年金の場合(次の①〜⑤のいずれかに該当)

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気・けがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
  5. 老齢厚生年金の受給資格期間(25年以上)を満たした方が死亡したとき

保険料納付要件

①②に基づく場合は、死亡日の前日において、保険料納付済期間(免除含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、死亡日が令和18年(2036年)3月末日までは特例があります。亡くなった方が65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければOKです。

3. 受け取る側の要件

生計維持要件

遺族年金を受け取るためには、亡くなった方に「生計を維持されていた」ことが必要です。具体的には次の条件を満たす必要があります。

  • 亡くなった方と生計を同じくしていたこと
  • 受け取る遺族の前年の年収が850万円未満(または所得655.5万円未満)であること

⚠️ 共働き夫婦の注意点:妻(または夫)の年収が850万円以上の場合、「生計を維持されていた」とみなされず、遺族年金を受け取れない可能性があります。

受け取る側の年齢・性別による条件(遺族厚生年金)

遺族の立場受給条件
子のある配偶者(妻・夫)要件を満たせば受給可
子のない妻(30歳以上)受給可(65歳まで)
子のない妻(30歳未満)5年間のみ
子のない夫55歳以上に限り受給可(受給開始は60歳から)
父母・祖父母55歳以上に限り受給可(受給開始は60歳から)

子のない夫は55歳未満だと受給できない点が現行制度の大きな男女差です。この点は2028年改正で見直される予定です。

4. 【フロー図】自分は遺族年金をもらえる?

配偶者が亡くなったとき、遺族年金を受け取れるかどうかを以下のフローで確認しましょう。

📋 遺族年金 受給判定フロー

スタート:配偶者が亡くなった

STEP 1|亡くなった配偶者は厚生年金(会社員・公務員)に加入していたか?

✅ YES → STEP 2へ
❌ NO(自営業・国民年金のみ)
→ 下の「自営業の場合」へ
【自営業(国民年金のみ)の場合】
子(18歳年度末未満など)がいる → 遺族基礎年金を受給できる可能性あり
子がいない → 遺族年金の受給は難しい(寡婦年金・死亡一時金の確認を)

STEP 2|保険料納付要件を満たしているか?

(直近1年間の未納なし、または国民年金加入期間の2/3以上納付)

✅ YES → STEP 3へ
❌ NO → 受給不可

STEP 3|あなた(遺族)の年収は850万円未満か?

✅ YES → STEP 4へ
❌ NO → 生計維持要件を満たさず受給不可の可能性大

STEP 4|子ども(18歳年度末未満、または障害等級1・2級で20歳未満)はいるか?

✅ YES
遺族基礎年金+遺族厚生年金の両方を受給できる可能性あり
❌ NO(子なし・子が成長した)
→ STEP 5へ

STEP 5|あなた(遺族)の性別・年齢を確認

あなたの状況 結果
妻・30歳以上・子なし ✅ 遺族厚生年金を受給できる(65歳まで)
妻・30歳未満・子なし ⚠️ 遺族厚生年金を5年間のみ受給
夫・55歳以上・子なし ✅ 遺族厚生年金を受給できる(受給開始は60歳から)
夫・55歳未満・子なし ❌ 現行制度では受給不可
※2028年改正後は変更予定

※上記はあくまで概略フローです。実際の受給可否は個別の状況により異なります。詳細は年金事務所にご確認ください。

5. 共働き夫婦のケース別シミュレーション

ケース1:子どもあり・夫(会社員)が死亡、妻も会社員

前提:夫が40代で死亡。妻(35歳)も会社員で年収500万円。子ども2人(8歳・5歳)。

結果:遺族基礎年金+遺族厚生年金の両方を受給できる

  • 妻の年収500万円は850万円未満 → 生計維持要件を満たす
  • 子ども2人が18歳年度末未満 → 遺族基礎年金の対象
  • 夫が厚生年金加入中に死亡 → 遺族厚生年金の対象

年金額のイメージ(令和8年4月時点):

  • 遺族基礎年金:847,300円 + 243,800円×2人 = 1,334,900円(年額)
  • 遺族厚生年金:夫の報酬比例部分 × 3/4(夫の給与・加入期間による)

ケース2:子どもなし・夫(会社員)が死亡、妻も会社員

前提:夫が45代で死亡。妻(42歳)も会社員で年収600万円。子なし。

結果:遺族厚生年金のみ受給できる(遺族基礎年金は対象外)

  • 子どもがいないため遺族基礎年金は受け取れない
  • 妻42歳・年収600万円 → 遺族厚生年金の受給対象(30歳以上・年収要件OK)
  • 妻65歳になるまで受給可能

さらに、夫の死亡時に妻が40歳以上65歳未満で子なしの場合は中高齢寡婦加算(年額635,500円)が上乗せされます。

ケース3:子どもあり・妻(会社員)が死亡、夫も会社員(現行制度の落とし穴)

前提:妻が40代で死亡。夫(45歳)も会社員で年収700万円。子ども1人(10歳)。

結果:子がいる間は両方受給できるが、子が18歳年度末を過ぎると夫への遺族厚生年金は終了

子どもの年齢夫が受け取れるもの
18歳年度末未満の間遺族基礎年金+遺族厚生年金(両方)
子が18歳年度末を過ぎた後(夫55歳未満)なし(現行制度)

これが現行制度の大きな問題点です。妻が亡くなっても、55歳未満の夫は遺族厚生年金を継続して受け取れません。この男女差は2028年改正で是正される方向です。

ケース4:65歳以上・自身も老齢厚生年金を受給する場合

前提:67歳の妻(元会社員)が夫に先立たれた。妻自身も老齢厚生年金を受給している。

65歳以上で自身の老齢厚生年金の受給権がある場合、次の2つのうち高い方が遺族厚生年金の額となります。

  1. 夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)× 3/4
  2. 夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)× 1/2 + 妻自身の老齢厚生年金 × 1/2

①と②を比較して高い方が遺族厚生年金の額となり、老齢厚生年金は全額受け取れます(遺族厚生年金は老齢厚生年金相当額が停止されます)。共働きで自身も厚生年金を長年かけていた場合、②の方が高くなるケースがあります。

6. 遺族年金の金額はどう計算する?

遺族基礎年金の年金額(令和8年4月分から)

子の人数年金額(年額)
子1人847,300円 + 243,800円 = 1,091,100円
子2人847,300円 + 243,800円×2 = 1,334,900円
子3人847,300円 + 243,800円×2 + 81,300円 = 1,416,200円

※昭和31年4月2日以後生まれの方の場合。年金額は毎年度改定されます。

遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金は「亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)× 3/4」が基本です。亡くなった方の生前の平均給与と加入期間によって変わります。

厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます(短期加入でも最低保証あり)。

7. 中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算

中高齢寡婦加算とは

次のいずれかに該当するが受け取る遺族厚生年金に、40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円が加算されます。

  • 夫が亡くなったとき、妻が40歳以上65歳未満で、子がいない場合
  • 遺族基礎年金を受け取っていた子のある妻が、子の成長等により遺族基礎年金を受給できなくなった場合

💡 夫に先立たれた40〜65歳の妻は、子がいなくても年63万円以上の加算が受けられます。自身が年収850万円未満であれば、遺族厚生年金にこの加算が上乗せされます。

経過的寡婦加算

昭和31年4月1日以前生まれの妻を対象とした加算です。65歳以降に老齢基礎年金を受け取るようになると中高齢寡婦加算がなくなりますが、その代わりに一定額を補完する加算です。現在は対象者が限定的です。

8. 令和7年改正(2028年施行)で何が変わる?

改正の背景

現行の遺族厚生年金には男女差があります。「妻が先立たれた夫」は55歳未満だと受給できない一方、「夫に先立たれた妻」は30歳以上であれば65歳まで受給できます。共働きが一般的になった現代において、この差は実態に合わなくなっています。

主な改正ポイント

① 男女差の解消
現行制度では不利だった「子のない夫」への制限が緩和される方向です。

② 有期給付化の方向性
子のない配偶者への遺族厚生年金が、一定期間(経過措置を設けた上で)有期化される方向性が示されています。子のない30歳以上の妻が65歳まで受給できる現行ルールが変わる見込みです。

③ 繰下げ受給ルールの変更(令和10年3月31日施行)
令和10年3月31日時点で遺族厚生年金の受給権を有し65歳未満の方(昭和38年4月2日以降生まれ)については、老齢厚生年金・老齢基礎年金それぞれの繰下げ受給ルールが変更されます。

ケース現行制度2028年改正後の方向性
妻が死亡、夫55歳未満・子なし受給不可受給できる方向へ
夫が死亡、妻30歳以上・子なし65歳まで受給有期給付化の可能性
夫が死亡、妻30歳未満・子なし5年間のみ変更の可能性

⚠️ 注意:改正の詳細(具体的な有期給付期間・経過措置の内容等)は施行規則等で順次明確化される予定です。記事執筆時点での最新情報は、日本年金機構や厚生労働省の公式発表を必ずご確認ください。

9. まとめ:チェックポイント一覧

配偶者が亡くなったとき、遺族年金を受け取れるかどうかは次のポイントで確認しましょう。

【亡くなった方について】

  • 厚生年金に加入していたか(会社員・公務員か)
  • 保険料を直近1年間未納なく納めていたか(または加入期間の2/3以上納付)
  • 年金受給資格期間(25年以上)を満たしていたか

【遺族(受け取る側)について】

  • 年収は850万円未満か(生計維持要件)
  • 18歳年度末未満の子どもはいるか
  • 年齢は何歳か(特に夫が受け取る場合は55歳以上かどうか)

【2028年以降を見据えて】

  • 現在55歳未満の夫も、改正後は受給できる可能性がある
  • 子のない妻の長期受給が有期化される可能性がある
  • 繰下げ受給を検討している場合は、遺族年金との関係を必ず確認する

遺族年金の受給可否・金額は個人の状況によって大きく異なります。詳細は最寄りの年金事務所またはねんきんダイヤル(0120-051-165)にご相談ください。

参考:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

※この記事の情報は2026年5月時点のものです。

この記事を書いた人

【運営者プロフィール】

▶ 2018年〜 介護系ソフトの勤怠・給与計算サポート業務
▶ 給与計算の資格を独学で取得
▶ 2022年7月〜2025年5月 給与奉行・法定調書奉行のコールセンター勤務
▶ 現在 独学で最新情報をアップデートしながら情報発信中

現場で数多くの「困った」に向き合ってきた経験をもとに、
わかりやすく・正確な情報をお届けします。

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