「雇用保険も今年から変わるんですよね?」への、はっきりしたお答え
前回・前々回の記事で2026年10月の社会保険改正についてお伝えしたところ、「雇用保険の方も今年から週10時間になるんですよね?」というお問い合わせを何件もいただきました。お気持ちはとてもよく分かるのですが、答えは「いいえ」です。雇用保険の適用拡大(週10時間以上への変更)は2028年10月の施行予定で、2026年の社会保険改正とは別の制度・別のタイミングの改正です。
先に結論の一覧を示します。2026年10月に変わるのは社会保険(健康保険・厚生年金保険)で、106万円の賃金要件が廃止されます。2028年10月に変わるのは雇用保険で、週の労働時間要件が20時間以上から10時間以上に拡大される予定です。この2つを分けて覚えるだけで、今後の情報収集がぐっと楽になります。

本質的な問題は「保険」という同じ言葉が2つの制度を指していること
この混同が起きる本質的な理由は、単純な情報不足ではありません。「社会保険」という言葉が、狭い意味(健康保険・厚生年金保険だけ)と広い意味(雇用保険・労災保険も含めた全体)の2通りで使われていることが根本にあります。ニュースやSNSで「社会保険が変わる」と言われたとき、それがどちらの意味なのかは文脈次第で、読み手が勝手に判断するしかないのが実情です。
混同が起きる3つの原因
原因1:「社会保険」の指す範囲があいまい
狭義の社会保険(健康保険・厚生年金)と、雇用保険・労災保険を合わせた広義の社会保険。どちらも同じ「社会保険」という言葉で呼ばれるため、片方の改正のニュースを見て「社会保険全体が変わった」と誤解してしまいます。
原因2:施行年がどちらも「10月」
2026年10月と2028年10月、どちらも10月に施行されるという偶然の一致が、余計に「同じ改正なのでは」という印象を強めています。
原因3:どちらも「週の労働時間」が基準
社会保険の要件にも雇用保険の要件にも「週の所定労働時間」という共通のものさしが使われています。数字が「20時間」「10時間」と近い範囲にあるため、どちらの制度の話をしているのか混ざりやすいのです。
解決策:「保険の種類」×「施行年」で整理する
一番確実な整理方法は、ニュースを見るたびに「これは社会保険の話か、雇用保険の話か」「施行はいつか」の2つを必ずセットで確認する習慣をつけることです。
- 社会保険(健康保険・厚生年金) → 2026年10月施行 → 賃金要件(106万円)が廃止
- 雇用保険 → 2028年10月施行(予定)→ 労働時間要件が週20時間以上から週10時間以上に拡大
「保険」という言葉が出てきたら、まず「どの保険の話か」を確認する。この一手間だけで、混乱のほとんどは防げます。
現行の雇用保険の加入要件、いま一度おさらい
2028年の改正の話をする前に、現行の要件を確認しておきましょう。現在、雇用保険に加入するための条件は「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがあること」の2つです。この「週20時間以上」という数字が、2028年10月に「週10時間以上」へと引き下げられる予定になっています。
2028年10月から何が変わるのか
労働時間要件が半分になることで、これまで雇用保険の対象外だった、より短時間の働き方をしている方も加入対象に含まれるようになります。具体的には、短時間のパート勤務や、複数の職場を掛け持ちしているような働き方をしている方への影響が大きいとみられています。加入対象が広がるということは、失業した場合の失業給付や、育児休業給付・介護休業給付といった雇用保険からの給付を受けられる人が増えるということでもあります。
なお、制度の詳細な運用ルールについては今後、国会審議や関連する省令・通達によって詰められていく部分も残っています。この記事の内容は執筆時点の情報であり、確定情報については今後も継続して確認・更新していきます。
よくある質問
Q. 社会保険料と雇用保険料は何が違うのですか?
A. 社会保険料(健康保険・厚生年金保険料)は主に医療費の給付や将来の年金のための保険料です。一方、雇用保険料は失業時の給付や、育児休業・介護休業中の給付などに充てられる、まったく別の保険料です。加入する制度も納める先も異なります。
Q. 複数の職場を掛け持ちしている場合、雇用保険はどうなりますか?
A. 現行制度では、雇用保険は主たる1つの勤務先でのみ加入する仕組みです。2028年10月の改正で加入対象者は広がりますが、この「主たる勤務先で加入する」という基本的な仕組み自体が変わるかどうかは、今後の詳細発表を確認する必要があります。
Q. 今、何か手続きをしておく必要はありますか?
A. 2028年10月はまだ先のため、現時点で従業員・会社側ともに特別な手続きは必要ありません。まずは自分(または従業員)の雇用契約上の週の労働時間を把握しておくことが、今できる一番の備えです。
今日からできる、具体的な3つのアクション
- 「社会保険」というニュースを見たら、まず狭義(健康保険・厚生年金)か広義(雇用保険含む)かを確認する癖をつける。 主語のズレが混同の9割の原因です。
- 2026年10月・2028年10月という2つの日付を、別の予定としてカレンダーやメモに分けて残しておく。 同じ「10月」だからこそ、意識的に分けて記録することが大切です。
- 雇用契約書上の「週の所定労働時間」を、今のうちに確認しておく。 2026年の社会保険改正・2028年の雇用保険改正、どちらにも共通して関わってくる数字です。
焦って先取りする必要はありません。ただし、いつ・何が変わるのかを正しい順番で知っておくことは、今からでもできます。2026年10月は目前の社会保険改正、2028年10月は少し先の雇用保険改正。この2つを分けて理解しておくことが、この先数年の年収の壁・扶養まわりのニュースを読み解く土台になります。



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