※2026年10月6日更新:前職の源泉徴収票を提出しない場合の年末調整の扱いについて記述を修正しました。国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」のとおり、前職分を確認できない場合は転職先で年末調整は行われず、確定申告で精算します。
「前職の源泉徴収票、転職先に出さないといけないの…?」
前回までの記事で、源泉徴収票が届く時期や、転職した年の年末調整の仕組みについて解説してきました。ただ、実際に源泉徴収票を手にすると、こんな気持ちになる方も多いのではないでしょうか。
「前の会社での給料、新しい会社に知られたくない」
「なんとなく提出するのが気まずい」
「そもそも出さなくても何とかならないの?」
今回は、こうした「源泉徴収票を出したくない」というモヤモヤに正面から向き合い、提出しなかった場合に実際どうなるのか、法律上の位置づけや代わりの対処法まで、分かりやすく解説していきます。
そもそも源泉徴収票の提出は義務なの?
まず気になるのが、「提出は絶対にしなければいけないルールなのか」という点です。
年の途中で転職した人が年末調整を受けるには、前職の源泉徴収票が必要です。国税庁のタックスアンサー「No.2674 中途就職者の年末調整」では、前の勤務先の給与も含めて年末調整を行う必要があり、その金額は前の勤務先が発行した源泉徴収票などで確認するとされています。つまり源泉徴収票は「年末調整を受けるために欠かせない書類」です。
提出しないという選択自体はできますが、その場合は転職先で年末調整そのものが行われず、1年分の税金を自分で確定申告して精算することになります。ここが一番のポイントです。
源泉徴収票を提出しないとどうなる?
提出しなかった場合に起こることを、順番に見ていきましょう。
まず、転職先の会社は前職分の給与を確認できないため、年末調整を行うことができません。「転職先の給与分だけで年末調整する」という扱いにはならない点に注意してください。国税庁のNo.2674でも、前職分の給与が確認できないときは年末調整を行えず、本人が確定申告で精算すると案内されています。
この場合、転職先からは年末調整をしていない状態の源泉徴収票(転職先の給与分)が交付されます。前職分・転職先分のどちらも1年分の税額が精算されていない状態になります。
その結果、翌年に前職・転職先の両方の源泉徴収票をもとに、自分で確定申告をして1年分の所得税を精算する必要が出てきます。生命保険料控除や扶養控除なども、年末調整の代わりに確定申告で申告します。以前の記事でも触れましたが、これは
「パターンC 年内に転職したが源泉徴収票を提出しなかった場合」に近い状態です。
年の途中で退職・転職した年末調整はどうなる?【会社員向け】
確定申告を忘れてしまうと、本来納めるべき税金が不足したままになり、後から追加で納税が発生する可能性があります。逆に、社会保険料控除などの影響で税金が戻ってくるケースも多いため、確定申告をしないままにしておくのは損になりやすいというのが実情です。
また、会社側からすると「源泉徴収票が出てこない社員がいる」という状態になるため、年末調整の担当者から提出を催促されたり、確定申告が必要になる旨を案内されたりすることが一般的です。提出しないこと自体を責められるというよりは、「では確定申告してくださいね」という事務的な案内で終わることがほとんどなので、そこまで身構える必要はありません。
前職の収入は本当に「バレる」のか
そもそも「出したくない」と感じる一番の理由は、前職の年収を新しい会社に知られたくないという気持ちだと思います。ここは正直にお伝えすると、源泉徴収票には前職の年収がそのまま記載されているため、書類上は把握されてしまいます。
ただし、この情報を実際に取り扱うのは、経理や総務、給与計算の担当者に限られます。年末調整の事務作業として金額を扱うだけで、上司や同僚に共有されるような情報ではありません。担当者としても、日々多くの社員の源泉徴収票を処理しているため、一人ひとりの金額を特別に気にかけているわけではないケースがほとんどです。
とはいえ、「知られる可能性がゼロではない」という点に抵抗を感じる方がいるのも自然なことです。次の項目で、提出したくない場合の具体的な選択肢を整理します。
それでも提出したくない場合の選択肢
STEP1:提出せず、自分で確定申告をする
最もシンプルな方法は、前職の源泉徴収票を転職先には提出せず、その代わりに自分で確定申告を行うことです。
この場合、転職先では年末調整が行われないため、前職と転職先の両方の源泉徴収票を使って、翌年の確定申告期間(令和8年分は2027年2月16日〜3月15日)に1年分をまとめて自分で申告します。還付を受けるための申告であれば、1月1日から提出できます。確定申告の具体的な進め方については、以前の記事でも解説しているとおり、スマートフォンとマイナンバーカードを使えば自宅からでも手続きが可能です。
STEP2:転職先には「確定申告するので提出しない」と伝えておく
無言のまま提出しないでいると、年末調整の締め切り間際に担当者から催促の連絡が来ることになります。あらかじめ「前職の源泉徴収票は提出せず、自分で確定申告します。年末調整は不要です」と一言伝えておくだけで、余計なやり取りを減らすことができます。理由を細かく説明する必要はなく、事務的な連絡で十分です。
STEP3:不安な場合は税務署や税理士に相談する
確定申告の内容が複雑になりそうな場合や、控除の計算に不安がある場合は、税務署や税理士に相談するのも一つの方法です。確定申告書等作成コーナーにはチャットボットも用意されているので、ちょっとした疑問はそこで解決できることも多いです。
知っておきたい注意点
提出しない選択をする場合、いくつか注意しておきたい点があります。
一つは、確定申告を忘れるとかえって不利益になる可能性があることです。年末調整で本来受けられたはずの控除や還付を、確定申告をしないことで受け取れないままになってしまうケースもあります。「出したくない」という気持ちから提出を避けた結果、確定申告自体もうっかり忘れてしまうと、損をするのは自分自身になってしまいます。
もう一つは、源泉徴収票そのものは今後も必要になる場面があるということです。確定申告のほか、住宅ローンの審査や保育園の申請など、収入を証明する書類として求められることがあります。提出しないとしても、紛失せずに保管しておくことをおすすめします。
よくある疑問Q&A
Q. 提出しないことで会社から不利な扱いを受けることはありますか?
A. 提出しないこと自体で不利な扱いを受けることは基本的にありません。会社側は「年末調整ができないので確定申告をお願いします」という案内をするだけのケースがほとんどです。
Q. 年末調整の途中で「出したくない」と言うのは失礼にあたりますか?
A. 特に失礼にはあたりません。年末調整の担当者にとっても、確定申告に切り替える社員は珍しいことではないため、事務的に対応してもらえます。理由を詳しく説明する必要はありません。
Q. 一度提出してしまったら取り消せますか?
A. 提出後に「やはり年末調整をしないでほしい」と依頼することも可能ですが、会社側の事務処理の進み具合によっては対応が難しい場合もあります。提出前によく検討することをおすすめします。
源泉徴収票の悩み別早見表と、退職から確定申告までの流れは、こちらのまとめ記事で整理しています。
まとめ
「出したくない」という気持ちから提出しないという選択も可能です。ただしその場合、転職先では年末調整が行われず、前職・転職先の両方の源泉徴収票をもとに自分で確定申告をして精算する必要があります。
前職の収入は書類上は転職先に伝わってしまいますが、実際に扱うのは経理や総務の担当者に限られ、周囲に広く知られるようなものではありません。それでも抵抗がある場合は、確定申告に切り替える旨をあらかじめ転職先に伝えておくことで、スムーズに対応してもらえます。
大切なのは、「出したくない」という気持ちだけで判断を終わらせず、確定申告という代わりの手続きをきちんと行うことです。前回までの記事で解説した年末調整の仕組みや確定申告の具体的な方法も、あわせて参考にしてみてください。





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