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10月の終わり、従業員の机に保険会社からの封筒が届きはじめるころ。総務のあなたのもとには「この証明書、どこに何を書けばいいんですか?」という質問が、ぽつぽつと集まってきます。
しかも今年は「23歳未満の扶養親族がいると控除が増える」という改正があり、「去年の書き方で教えて大丈夫?」と不安になっているかもしれません。
給与計算ソフトのサポート窓口にいたころ、11月にいちばん多かったのが保険料控除申告書(正式名称:給与所得者の保険料控除申告書)のご相談でした。中身は「計算方法」よりも、「証明書のどの数字を写せばいいのか」というものがほとんどです。
わからないのは、あなたの勉強不足ではありません。証明書と申告書の”言葉”がそろっていないからです。
この記事では、次のことがわかります。
- 令和8年分(2026年分)の生命保険料控除で何が変わったか
- 保険料控除申告書の書き方(新しく増えた「☆」欄を含む)と、証明書の見方
- 生命保険料控除・地震保険料控除の計算方法(計算例5つ)
まず押さえる:令和8年分で変わったのは「一般の生命保険料」だけ
「年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例」は、令和7年度税制改正で令和8年分の措置として設けられ、令和8年度税制改正で令和9年分まで延長されました。年末調整では、令和8年12月の年末調整から反映します(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。
| 項目(所得税・令和8年分) | 改正前 | 改正後(23歳未満の扶養親族がいる場合) |
|---|---|---|
| 新生命保険料の一般生命保険料控除 | 最高4万円(計算式Ⅰ) | 最高6万円(計算式Ⅱ) |
| 新旧の一般生命保険料を両方使う場合の限度額 | 4万円 | 6万円 |
| 介護医療保険料控除・個人年金保険料控除 | 最高4万円 | 変更なし(最高4万円) |
| 生命保険料控除の合計限度額 | 12万円 | 変更なし(12万円) |
| 地震保険料控除 | 最高5万円 | 変更なし(最高5万円) |
ポイントは3つです。
- 対象は「一般の生命保険料」のうち、新生命保険料(平成24年1月1日以後に契約したもの)がある場合だけ
- 23歳未満の扶養親族がいない人は、去年と同じ計算方法のまま
- 合計の上限12万円は変わらないため、ほかの区分ですでに上限近くまで使っている人は、増える額が小さくなることがある
なお、この記事で扱うのは所得税(年末調整)の控除額です。住民税の取扱いは、お住まいの市区町村でご確認ください。
改正があっても、変わったのは”一般の生命保険料の1区分”だけ。全部を覚え直す必要はありません。
本当の問題は「計算」ではなく「証明書の読み取り」
生命保険料控除というと、計算式の多さにまず目が行きます。でも、サポート窓口に届いたご相談を振り返ると、つまずきの多くは計算の前の段階で起きていました。
例えば、医療保険の保険料を「一般の生命保険料」の欄に書いてしまう。平成23年以前の契約なのに「新」に丸をつけてしまう。どちらも、計算式を正しく使っていても控除額がずれます。
申告書の計算欄は、証明書から正しい区分と金額を写せていれば、上から順に埋めるだけで答えが出るように作られています。令和8年分はそこに「23歳未満の扶養親族の有無」という確認が1つ加わりました。
控除額のミスの多くは、計算式ではなく”区分の写し間違い”から始まっています。
保険料控除申告書でつまずく3つの原因
原因1:証明書の「区分」と「新・旧」を読み違えている
控除証明書には、区分と適用制度(新制度/旧制度)が書かれています。区分ごとの保険の例は次のとおりです。
| 区分 | 主な保険の例 |
|---|---|
| 一般の生命保険料 | 定期保険、終身保険、学資保険、収入保障保険など |
| 介護医療保険料 | 医療保険、がん保険、介護保険、就業不能保険など |
| 個人年金保険料 | 個人年金保険(税制適格特約付き) |
新制度(平成24年1月1日以後の契約)は3区分・合計最高12万円、旧制度(平成23年12月31日以前の契約)は一般と個人年金の2区分・各最高5万円で合計最高10万円です。旧制度には介護医療の区分がないため、平成23年以前のがん保険は旧制度の一般の生命保険料になります。名前ではなく、証明書の記載で判断するのが確実です。
原因2:去年の申告書を見ながら書き、「23歳未満」の欄を見落とす
令和8年分の保険料控除申告書には、一般の生命保険料の欄に「年齢23歳未満の扶養親族の有無」と「☆年齢23歳未満の扶養親族」欄が新しく加わりました。去年の控えをお手本にすると、この欄を飛ばしてしまいます。
この欄が空欄のままだと、会社は特例を使えるかどうかを確認できません。中学生と大学生の子どもがいる従業員が、去年と同じ4万円で計算して提出する、という場面は、今年とくに起きやすいミスの一つです。
原因3:上限額の「4万円・6万円・12万円・5万円」が混ざっている
生命保険料控除には、区分ごとの上限(4万円)、旧制度だけの上限(5万円)、新旧を両方使う場合の上限(4万円、特例適用なら6万円)、合計上限(12万円)があり、地震保険料控除にも5万円と1万5,000円の上限があります。「特例だから合計も増える」といった思い込みが起きがちです。
わからなくなったら、上限額を暗記するより”申告書の欄の順番どおり”に進めるほうが確実です。
保険料控除申告書の書き方【令和8年分】
ステップ1:証明書から「区分・新旧・金額」を写す
控除証明書で、まず次の4点を確認します。
| 証明書で見る場所 | 申告書に書く場所 | よくある間違い |
|---|---|---|
| 区分(一般/介護医療/個人年金) | 一般の生命保険料/介護医療保険料/個人年金保険料の欄 | 保険の名前で判断してしまう |
| 適用制度(新制度/旧制度) | 「新・旧の区分」欄 | 契約日だけを見て判断する |
| 証明額(配当金などを差し引いた額) | 「あなたが本年中に支払った保険料等の金額」欄 | 配当金を引く前の金額を書く |
| 契約者・保険金等の受取人 | 「保険等の契約者の氏名」「保険金等の受取人の氏名」欄 | 受取人が要件外の人になっている |
あわせて「誰の保険か」と「保険料を本人が負担しているか」を確認します。受取人は本人または配偶者・親族(個人年金保険料は本人か配偶者)であることが必要です。契約者が妻や子でも、本人が保険料を払っていれば控除の対象になります(国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」問8)。
月払いの契約の証明書は、9月までの払込状況と毎月の保険料をもとに作られています。どの金額を書くかは会社の案内に合わせてください。旧生命保険料で1契約9,000円以下のものを除き、証明書の添付(または電子データでの提出)が必要です。
ステップ2:「年齢23歳未満の扶養親族の有無」に丸をつける
令和8年分から、一般の生命保険料の欄に「年齢23歳未満の扶養親族の有無」の欄があります。該当する人は「有」に丸をつけ、「☆年齢23歳未満の扶養親族」欄に次の内容を書きます。
- 氏名(フリガナ)、あなたとの続柄
- 個人番号(会社の運用によって記載不要の場合あり)
- 生年月日(令和8年分は平成16年1月2日以後生まれが対象)
- あなたと住所が異なる場合は、その人の住所
- その人の本年中の合計所得金額の見積額
特例の対象は「扶養親族」で、令和8年分の所得要件は合計所得金額62万円以下(給与だけなら収入136万円以下)です。扶養控除の対象にならない16歳未満の子も含まれ、12月31日に生まれた子でも要件を満たします(同Q&A問11(注))。
共働きの夫婦の場合、扶養控除はどちらか一方しか受けられませんが、この特例は夫婦の双方で受けられます(同Q&A問7(注))。
ステップ3:一般の生命保険料の控除額を計算する
申告書の計算式は、計算式Ⅰ(新保険料等用)、計算式Ⅱ(年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の新保険料等用)、計算式Ⅲ(旧保険料等用)の3種類です。
| 年間の保険料 | 計算式Ⅰ(新・通常) | 計算式Ⅱ(新・23歳未満の扶養親族あり) | 計算式Ⅲ(旧) |
|---|---|---|---|
| 区分1 | 2万円以下:全額 | 3万円以下:全額 | 2万5,000円以下:全額 |
| 区分2 | 2万円超4万円以下:×1/2+1万円 | 3万円超6万円以下:×1/2+1万5,000円 | 2万5,000円超5万円以下:×1/2+1万2,500円 |
| 区分3 | 4万円超8万円以下:×1/4+2万円 | 6万円超12万円以下:×1/4+3万円 | 5万円超10万円以下:×1/4+2万5,000円 |
| 区分4 | 8万円超:一律4万円 | 12万円超:一律6万円 | 10万円超:一律5万円 |
※令和8年分。計算した金額に1円未満の端数があるときは切り上げます。
申告書の欄では、次のように進みます。
| 欄 | 内容 | 上限 |
|---|---|---|
| ① | 新生命保険料(A)を計算式Ⅰで計算 | 4万円 |
| ② | 新生命保険料(A)を計算式Ⅱで計算(23歳未満の扶養親族ありの人だけ) | 6万円 |
| ③ | 旧生命保険料(B)を計算式Ⅲで計算 | 5万円 |
| ④ | ①+③ | 4万円 |
| ⑤ | ②+③(23歳未満の扶養親族ありの人だけ) | 6万円 |
| ㋑ | ③と④のいずれか大きい金額、または⑤の金額 | ― |
計算例1:新生命保険料だけ6万円の場合(令和8年分)
| 項目 | 23歳未満の扶養親族なし | 23歳未満の扶養親族あり |
|---|---|---|
| 使う計算式 | 計算式Ⅰ | 計算式Ⅱ |
| 計算 | 60,000円×1/4+20,000円 | 60,000円×1/2+15,000円 |
| 控除額 | 35,000円 | 45,000円 |
計算例2:新生命保険料が12万円の場合(令和8年分・23歳未満の扶養親族あり)
- 計算式Ⅱ:120,000円×1/4+30,000円=60,000円(上限6万円ちょうど)
- 扶養親族なしなら計算式Ⅰで一律40,000円なので、差は20,000円
計算例3:新生命保険料7万円・旧生命保険料4万円の場合(令和8年分)
| 欄 | 23歳未満の扶養親族なし | 23歳未満の扶養親族あり |
|---|---|---|
| ①(計算式Ⅰ) | 70,000円×1/4+20,000円=37,500円 | ― |
| ②(計算式Ⅱ) | ― | 70,000円×1/4+30,000円=47,500円 |
| ③(計算式Ⅲ) | 40,000円×1/2+12,500円=32,500円 | 40,000円×1/2+12,500円=32,500円 |
| ④/⑤ | ④ 37,500円+32,500円=70,000円→上限40,000円 | ⑤ 47,500円+32,500円=80,000円→上限60,000円 |
| ㋑ | ③32,500円と④40,000円の大きいほう=40,000円 | ⑤の金額=60,000円 |
なお、旧生命保険料だけで6万円を超える場合は、③(最高5万円)のほうが④(最高4万円)より大きくなるため、③が控除額になります。23歳未満の扶養親族がいて新生命保険料もある場合は、⑤のほうが大きくなります。
端数の例: 23歳未満の扶養親族ありで新生命保険料が45,555円なら、45,555円×1/2+15,000円=37,777.5円→1円未満切り上げで37,778円です。
ステップ4:介護医療・個人年金を計算し、合計する
介護医療保険料と新個人年金保険料は、今までどおり計算式Ⅰ(最高4万円)です。個人年金保険料で新旧両方ある場合は、⑥(新・計算式Ⅰ)、⑦(旧・計算式Ⅲ)、⑧(⑥+⑦、最高4万円)のうち、⑦と⑧の大きいほうが控除額になります。
最後に、一般(㋑)・介護医療(㋺)・個人年金(㋩)を合計します。上限は12万円です。
計算例4:3区分の合計(令和8年分・23歳未満の扶養親族あり)
| 区分 | 保険料 | 計算 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般(㋑) | 新 12万円 | 計算式Ⅱ:120,000円×1/4+30,000円 | 60,000円 |
| 介護医療(㋺) | 5万円 | 計算式Ⅰ:50,000円×1/4+20,000円 | 32,500円 |
| 個人年金(㋩) | 新 10万円 | 計算式Ⅰ:8万円超のため一律 | 40,000円 |
| 合計 | ― | 60,000円+32,500円+40,000円=132,500円 | 上限120,000円 |
特例がない場合は40,000円+32,500円+40,000円=112,500円です。この例では、特例で増える控除額は2万円ではなく7,500円(120,000円-112,500円)にとどまります。
欄の順番どおりに進めれば大丈夫です。ただし、「23歳未満の扶養親族の有無」の欄だけは、全員分必ず確認してください。
地震保険料控除の書き方(令和8年分も変更なし)
地震保険料控除は、令和8年分の改正はありません。「地震保険料控除証明書」または「損害保険料控除証明書」を見て、地震保険料(Ⓑ)と、平成18年12月31日までに契約した旧長期損害保険料(Ⓒ)に分けて書きます。
| 区分(令和8年分) | 控除額 |
|---|---|
| 地震保険料だけ | 支払った金額の全額(最高5万円) |
| 旧長期損害保険料だけ | 1万円以下:全額/1万円超2万円以下:×1/2+5,000円/2万円超:一律1万5,000円 |
| 両方ある場合 | それぞれ計算した金額の合計(最高5万円) |
計算例5:地震保険料3万円・旧長期損害保険料1万6,000円の場合(令和8年分)
- 地震保険料:30,000円(全額)
- 旧長期損害保険料:16,000円×1/2+5,000円=13,000円
- 合計:30,000円+13,000円=43,000円(5万円以下なので、そのまま43,000円)
1つの契約が両方に当たる場合は、どちらか一方だけで計算します。また、対象になるのは、本人または生計を一にする親族が所有し常に住んでいる家屋や、これらの人が所有する生活用の家財を目的とした契約です(国税庁 タックスアンサーNo.1145)。申告書でも、保険の対象となった家屋に住む人・家財を使う人が「あなた又はあなたと生計を一にする親族」であることが必要とされています(記載例)。
証明書が届かない・間に合わないとき
- 保険会社に再発行を依頼する(ウェブで電子交付を選べる会社もあります)
- 保険料控除申告書を年末調整のあとに提出した場合も、翌年1月の源泉徴収票の交付時までなら年末調整の再計算ができます。確定申告で控除を受けることもできます(国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」問12(注1))
ご自身のケースで判断に迷うときは、所轄の税務署(電話相談センター)や税理士にご確認ください。
今日からできること
- 今日: 配付する保険料控除申告書が「令和8年分」の様式か確認し、案内文に「23歳未満の扶養親族がいる人は☆欄も記入」と1行加える
- 今週: 扶養控除等申告書の情報から、23歳未満の扶養親族がいる従業員を一覧にしておく(回収後のチェックが早くなります)
- 申告書の回収期限まで: 回収した申告書で「有・無」の丸と☆欄、区分・新旧の写し間違い、合計12万円・地震5万円の上限を順番にチェックする
完璧より、まず”23歳未満の子がいる人の一覧”づくりから。
なお、ふるさと納税の寄附金控除は年末調整では受けられません。会社員の方は、ワンストップ特例(確定申告が不要で、寄附先が5自治体以内の場合)か確定申告で手続きします。
まとめ
- 令和8年分は、23歳未満の扶養親族がいる人の一般の生命保険料控除(新生命保険料)が最高6万円に。介護医療・個人年金・合計12万円・地震保険料控除は変わりません
- 申告書には「年齢23歳未満の扶養親族の有無」と☆欄が新設。去年の控えをお手本にすると見落とします
- ミスの多くは計算ではなく、証明書の区分・新旧の写し間違い。欄の順番どおりに進めれば答えが出ます
あわせて読みたい:
- 【令和8年分】基礎控除申告書の書き方|改正点と記入例
- 【令和8年分】年末調整の書類が集まらないときの回収術
- 扶養控除等申告書の書き方を従業員向けにわかりやすく解説
- 年末調整でよくある間違い・やり直しのケース集
参考:
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(昨年と比べて変わった点、2-3 保険料控除申告書の受理と内容の確認)(2026年10月8日確認)
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」記載例(2026年10月8日確認)
- 国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」(2026年10月8日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1145「地震保険料控除」(2026年10月8日確認)
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2026年10月8日確認)
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに、一般的な内容を解説したものです。
個別のケースについては、税務署・税理士・年金事務所・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。



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