10月。転職先の総務から、こんな案内が届いていませんか。「年末調整の書類と一緒に、前職の源泉徴収票を11月20日(金)までに提出してください」。
前の会社を辞めたのは8月。そういえば源泉徴収票、届いていたかな。封筒を開けた記憶がない。そもそも、いつ届くものなのか。前の会社に連絡するのも、なんだか気まずい……。
給与計算ソフトのサポート窓口にいたころ、10月から12月にかけて、会社側からも「中途入社の人の前職の源泉徴収票が出てこないのですが、どうすればいいですか」というご相談を毎年のようにいただきました。会社員の側も担当者の側も、同じところで止まっているのです。
転職した年の源泉徴収票で迷うのは、あなたの段取りが悪いからではありません。誰も「全体の流れ」を教えてくれないからです。
この記事は、当ブログの源泉徴収票に関する4本の記事をひとつにまとめた「地図」のような記事です。次のことがわかります。
- 退職してから確定申告まで、源泉徴収票をめぐる流れの全体像
- 「届かない」「出したくない」「間に合わない」など、悩み別の答えと次に読む記事
- 令和8年分(2026年分)の年末調整に向けて、10月の今やっておきたいこと
先に結論を3行でまとめます。
- 前職の会社は、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付することになっています(所得税法第226条)。
- 1か月たっても届かなければ、まず前職に確認。それでもだめなら税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。
- 転職先の年末調整に前職の源泉徴収票を出さない(出せない)場合は、翌年に自分で確定申告をして精算します。
本当の問題は「2つの締切のズレ」にある
源泉徴収票(1年間の給与の総額と、差し引かれた所得税の額が書かれた書類)で困る人の多くは、「書類そのもの」ではなく「時期」でつまずいています。
転職した年には、締切が2つあります。
- 前職の締切:退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付する(会社の義務)
- 転職先の締切:年末調整(1年間の給与から天引きした所得税を、12月に正しい金額に精算する手続き)の書類の提出日。多くの会社で11月〜12月上旬
この2つは、まったく別々に決まっています。例えば、9月30日(水)に退職した人なら、前職の交付期限の目安は10月末です。転職先の締切が11月20日(金)なら、届くのを待って、届かなければ催促して、それでもだめなら税務署に相談する……という時間は、思ったほど残っていません。
逆に、11月30日(月)に退職して12月に入社した人は、前職の交付期限が12月末ごろになります。転職先の年末調整に間に合わないことも、十分ありえます。
サポートの現場でも、「届いてから考えよう」と待っているうちに締切を過ぎてしまったケースをよく見てきました。
源泉徴収票は「届くのを待つ書類」ではなく、「締切から逆算して動く書類」です。
悩み別早見表:あなたの「困った」はどれですか
まずは、今の悩みに近いものを探してください。答えのひとことと、詳しく読める記事をまとめました(令和8年10月時点)。

| 今の悩み | 答えのひとこと | 詳しく読む記事 |
|---|---|---|
| 退職したけど、源泉徴収票はいつ届く? | 退職の日以後1か月以内の交付が会社の義務。12月・1月の退職は遅れやすい | 記事1:いつ届く? |
| 1か月たっても届かない | まず前職の総務・人事に状況確認。メールなど記録が残る方法で | 記事4:届かない・催促の例文 |
| 催促しても届かない | 税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できる | 記事4:届かない・催促の例文 |
| 転職先に出したくない | 出さないと決めることもできるが、年末調整は受けられず、確定申告が必要 | 記事2:出したくない |
| 出さなかった・締切に間に合わなかった | 翌年に自分で確定申告。還付申告なら翌年1月1日から5年間提出できる | 記事3:確定申告の手順付き |
| 前職の年収を知られたくない | 出せば担当者には伝わる。出さなくても住民税の通知から推測される可能性はある | 記事2・記事3 |
| 年末時点で、まだ再就職していない | 原則として翌年に確定申告(還付申告)。給与総額136万円以下の人や12月分の給与を受けてから退職した人などは、前の勤務先で年末調整される例外あり | 年の途中で退職・転職した年末調整 |
| 担当者として、中途入社者の対応を知りたい | 前職分を確認できなければ年末調整はできず、本人の確定申告に | 中途入社・退社した社員の年末調整 |
記事へのリンクは、次のとおりです。
- 記事1:転職したら源泉徴収票はいつ届く?もらえない場合の対処法
- 記事2:転職先に源泉徴収票を出したくない!提出しないとどうなる?
- 記事3:前職の源泉徴収票を提出先に出さないとどうなる?義務はある?確定申告の手順付き【2026年版】
- 記事4:前職の源泉徴収票が届かない!いつまで待つ?催促の連絡例と最終手段【2026年版】
年末時点でまだ再就職していない人の例外(国税庁 No.2665:その年の給与の総額が136万円以下の人[その年に別の勤務先から給与を受ける見込みのある人を除く]、12月分の給与を受けてから退職した人など)は、前の勤務先で年末調整が行われます。くわしくは年の途中で退職・転職した年末調整はどうなる?【会社員向け】をご覧ください。
迷ったら、表の「答えのひとこと」だけ読んで、次の行動をひとつ決めてください。
時系列でわかる:退職から確定申告までの5ステップ
ここからは、退職してから確定申告までを、順番に見ていきます。今の自分がどのステップにいるかを確認しながら読んでください。

ステップ1:退職後1か月は「届くのを待つ」期間
所得税法第226条では、年の途中で退職した人については、退職の日以後1か月以内に、会社が源泉徴収票を交付することになっています。これは会社の義務です。
ただし、時期によっては遅れることもあります。12月や1月は、年末調整や、税務署・市区町村への書類提出で、給与担当者がいちばん忙しい時期です。この時期に退職した場合は、少し余裕をもって待つほうが気持ちもラクです。
また、源泉徴収票は、本人の承諾があれば紙ではなく電子データで渡すこともできます(所得税法第226条第4項)。「届いていない」と思っていたら、前職の給与明細システムに載っていた、ということもあります。
この段階でやっておきたいのは、次の2つです。
- 退職後に引っ越した場合は、新しい住所を前職に伝えておく
- 前職の給与明細がWebで見られる場合は、源泉徴収票が掲載されていないか確認する
届く時期の目安や、運営者自身の転職経験は、記事1で詳しく書いています。
ステップ2:1か月たっても届かないときは、前職に確認する
退職後1か月を過ぎても届かなければ、前職の総務や人事に連絡します。このとき大事なのは、強く責めるのではなく「状況を確認したい」という姿勢で連絡することです。担当者が忙しくて後回しになっていただけ、ということも少なくありません。
メールで連絡する場合は、例えば次のような文面です。
件名:源泉徴収票のご送付について(氏名)
◯◯株式会社 総務部 ご担当者様
お世話になっております。◯年◯月◯日付で退職いたしました◯◯です。
転職先で年末調整の手続きを行うため、源泉徴収票が必要となりました。本日時点でまだ手元に届いておりませんので、発送状況をご確認いただけますでしょうか。
未発送の場合は、発送のお見込み時期を教えていただけますと幸いです。
氏名/現住所/電話番号
電話で連絡する場合も、「名前」「退職日」「転職先に出す必要があること」「発送の見込み時期」の4つを伝えれば十分です。
ここで、ひとつ実務的なポイントがあります。次のステップ3で税務署に届け出るときは、「勤務先に源泉徴収票の交付を求めたことが分かる書類等」を添付することになっています(国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」)。電話だけで済ませず、メールなど記録が残る形でも依頼しておくと、いざというときに安心です。
電話のポイントや、自分の側に原因がないかの確認方法は、記事4にまとめています。
→ 前職の源泉徴収票が届かない!いつまで待つ?催促の連絡例と最終手段【2026年版】
催促は「電話だけ」で終わらせず、記録が残る形でも送っておいてください。
ステップ3:それでも届かないときは、税務署に「不交付の届出」
前職に依頼しても源泉徴収票が届かない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。国税庁の案内では、次のようになっています(令和8年10月時点)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる人 | 源泉徴収票を交付されなかった人 |
| 出せる時期 | 交付期限を過ぎた後、随時(中途退職は退職後1か月) |
| 提出先 | 納税地(通常は住所地)を所轄する税務署 |
| 添付するもの | 給与明細の写し(保存している場合)、交付を求めたことが分かる書類など |
| 提出方法 | e-Tax、または書面で持参・郵送 |
この手続きは、会社が倒産した場合に限ったものではありません。交付されない場合全般で使える手続きです。一方で、一度受け取った源泉徴収票をなくしてしまった場合の「再発行」は、この手続きの対象外です。紛失したときは、前職に再発行をお願いしましょう。
なお、国税庁のページでは、届出書を出す前に確認してほしいフローチャートや留意事項も案内されています。提出前に一度目を通しておくと、手戻りがありません。書面で提出する場合は、国税庁ページに掲載されている最新の様式を使ってください(令和8年に様式が変更されています)。
ステップ4:転職先に提出する(または「出さない」と決める)
源泉徴収票が手元に届いたら、転職先の総務・経理に提出します。提出の形(原本、電子で受け取ったデータの印刷など)は、転職先の指示に従ってください。その年に前の勤務先が2社以上ある場合は、扶養控除等申告書(正式名称:給与所得者の扶養控除等(異動)申告書)を出して給与を受けていた前の勤務先の分を、すべて12月に在籍している会社に提出します。副業などで扶養控除等申告書を出さずに受けていた給与は、年末調整には含まれません(国税庁 No.2674)。
ここで「前の会社の年収を知られたくない」と感じる人もいると思います。国税庁のタックスアンサーNo.2674では、年の途中で就職した人に前の勤務先の給与がある場合、その給与も含めて年末調整を行う必要があり、その確認は前の勤務先の源泉徴収票などで行うとされています。そして、確認ができないときは年末調整を行うことはできず、本人が確定申告で精算することになります。
つまり、前職の源泉徴収票を出さないと決めることはできますが、そのぶん「年末調整を受けられず、翌年に自分で確定申告をする」ことになります。出さないと決めた場合は、転職先に「前職分は自分で確定申告するので、源泉徴収票は提出しません」と一言伝えておくと、締切間際の催促を避けられます。
前職の収入が転職先に伝わる経路や、気まずさとの向き合い方は、記事2で詳しく書いています。
→ 転職先に源泉徴収票を出したくない!提出しないとどうなる?
ステップ5:出さなかった・間に合わなかったときは、翌年に確定申告
前職の源泉徴収票を出さなかった、または締切に間に合わなかった場合は、翌年に自分で確定申告をして、1年分の所得税を精算します。
確定申告の期間は、翌年2月16日から3月15日までです(所得税法第120条)。令和8年分は、令和9年(2027年)2月16日(火)〜3月15日(月)です。
また、税金が戻ってくる「還付申告」であれば、この期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 No.2030)。前職を辞めた後に国民年金保険料や国民健康保険料を自分で払っていた人は、その金額も社会保険料控除として申告できます。
一方で、国税庁のタックスアンサーNo.1900では、給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額などの合計が20万円を超える人は、原則として確定申告が必要とされています(一定の例外あり)。申告が必要なのにしないままだと、本来納めるべき税金が不足したままになり、無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。
用意する書類、e-Taxの準備、ふるさと納税や医療費控除をあわせて申告するときの注意点は、記事3にまとめています。
→ 前職の源泉徴収票を提出先に出さないとどうなる?義務はある?確定申告の手順付き【2026年版】
確定申告は「失敗」ではなく、もうひとつの正規ルートです。期限だけは守りましょう。
「出す」と「出さない」はどう違う?比較表
ステップ4で迷っている人のために、違いを表にまとめました(令和8年分・同じ年に転職した会社員の場合の一般的な流れ)。
| 項目 | 転職先に出す | 転職先に出さない(間に合わない) |
|---|---|---|
| 年末調整 | 転職先が前職分も合わせて行う | 行われない |
| 確定申告 | 原則不要(医療費控除などを受ける場合は別) | 翌年に自分で行う |
| 手間 | 源泉徴収票を渡すだけ | 書類を集めて申告書を作り、提出する |
| 税金の精算 | 12月などの給与で過不足を精算 | 還付は指定口座へ、不足は自分で納付 |
| 前職の年収 | 転職先の担当者には伝わる | 住民税の通知から推測される可能性はある |
例えば、転職先の締切が11月20日(金)で、前職の源泉徴収票が12月にずれ込みそうな場合を考えてみます。このときは、締切前に転職先の担当者へ「前職の源泉徴収票が12月上旬に届く見込みです」と伝えるのが先です。会社によっては、12月の給与計算に間に合う範囲で待ってもらえることもあります。間に合わなければ、翌年の確定申告で精算します。
いちばん避けたいのは「出さない」ことではなく、「出さないまま、確定申告もしない」ことです。
令和8年分は、年末調整に改正があります
今年(令和8年分)の年末調整には、もうひとつ知っておきたいことがあります。国税庁によると、令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正などが行われました。
これらの改正は、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。そのため、12月に行う年末調整から反映されます(11月までの毎月の源泉徴収に変更はありません)。
転職した人にとってのポイントは、前職分を合わせて年末調整を受けても、確定申告で精算しても、1年分の税額は改正後のルールで計算されるということです。ただ、年末調整で済ませられれば、改正の反映も含めて12月の給与で精算が終わります。
前職の源泉徴収票を早めにそろえておく理由が、今年はひとつ増えたと考えてください。
改正の中身は、こちらで先取り解説しています。
→ 【2026年12月改正】年末調整はどう変わる?知っておきたい3つのポイントを先取り解説
給与担当者の方へ:中途入社者の対応で押さえたいこと
この記事を読んでいる給与担当者の方に向けて、サポート窓口でよく受けたご相談をもとに、ポイントを3つだけ挙げます。
- 前職の源泉徴収票は、年末調整の時期ではなく「入社手続きのとき」に案内する(入社時のチェックリストに入れておく)
- 前職分が確認できない場合は、前職分を含めずに年末調整をすることはできない(国税庁 No.2674)。本人に確定申告が必要になることを早めに伝える
- 自社を退職した人には、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付する(所得税法第226条)。電子で渡す場合は本人の承諾が必要
例えば、年末調整の書類案内に「前職がある人は、源泉徴収票も一緒に提出してください。届いていない人は◯月◯日までに総務へご相談ください」と1行入れておくだけでも、締切間際の慌ただしさはかなり減ります。
中途入社者の源泉徴収票は、「年末に集める書類」ではなく「入社したときに案内する書類」です。
担当者向けの詳しい手順は、こちらにまとめています。
→ 中途入社・退社した社員の年末調整はどうする?前職の源泉徴収票の扱い方
今日からできること
- 今日:転職先の年末調整の案内を見て、源泉徴収票の提出締切を手帳やスマホに入れる
- 今週:前職の源泉徴収票が手元にあるか確認する。ない場合は、退職日から1か月を過ぎているかを確かめ、過ぎていれば前職にメールで状況を確認する
- 転職先の締切の1週間前まで:届く見込みが立たなければ、転職先の担当者に相談する。間に合わない場合は、翌年の確定申告に向けて書類を保管しておく
源泉徴収票の見方そのものがよくわからない、という方は、先にこちらを読んでおくと、書類が届いたときに落ち着いて確認できます。
→ 源泉徴収とは?年末調整で還付される理由と源泉徴収票の見方をわかりやすく解説
年末時点でまだ再就職していない方や、自分がどのパターンに当てはまるか確認したい方は、こちらが参考になります。
→ 年の途中で退職・転職した年末調整はどうなる?【会社員向け】
完璧に理解するより、まず「締切を1つ書き込む」ことから始めましょう。
まとめ
- 前職の源泉徴収票は、退職の日以後1か月以内に交付されるのが原則。届かなければ前職に確認し、それでもだめなら税務署に不交付の届出ができる
- 転職先に出せば、年末調整で前職分もまとめて精算される。出さない・間に合わない場合は、翌年に自分で確定申告をする
- 令和8年分は12月の年末調整で改正が反映される年。転職先の締切から逆算して、10月のうちに源泉徴収票の有無を確認しておく
ここまで読んで、「自分の場合はどうなるのだろう」と迷う点が残った方は、自己判断せず、税務署の電話相談センターや税理士に相談してください。
参考:
- e-Gov法令検索「所得税法」第226条(源泉徴収票)・第120条(確定所得申告)(2026年10月6日確認)
- 国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」(2026年10月6日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」(2026年10月6日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」(2026年10月6日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(2026年10月6日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」(2026年10月6日確認)
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(2026年10月6日確認)
- 国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」(2026年10月6日確認)
※本記事は、2026年10月時点の情報をもとに、一般的な内容を解説したものです。
個別のケースについては、税務署・税理士・年金事務所・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。



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