前職の源泉徴収票を提出先に出さないとどうなる?義務はある?確定申告の手順付き【2026年版】

前職の源泉徴収票を出さないとどうなる?義務と確定申告の手順【2026年版】 給与計算実務

※2026年10月6日更新:前職の源泉徴収票を提出しない場合の年末調整の扱いについて記述を修正しました。国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」のとおり、前職分を確認できない場合は転職先で年末調整は行われず、確定申告で精算します。

※ 2026年9月時点の情報です。同じ年に転職した方向けの内容です。

前職を退職したときに受け取る源泉徴収票。転職先に提出するのが当たり前だと思われがちですが、実は「出さない」という選択もできます。

ただし、出さない場合は転職先で年末調整そのものが行われないため、翌年に前職・転職先の源泉徴収票をもとに、自分で確定申告をして精算する必要があります。

この記事では、前職の源泉徴収票を出さなかった場合にどうなるのかを、提出の義務・前職の収入が「バレる」可能性・確定申告の手順まで、2026年版としてまとめました。

先に結論|出す場合と出さない場合の違い

3行でまとめると

  • 前職の源泉徴収票を出さないという選択自体はできますが、その場合転職先では年末調整が行われません(転職先の給与分だけで年末調整されるわけではありません)。
  • 前職分・転職先分とも1年分の税金が精算されないため、翌年に両方の源泉徴収票をもとに自分で確定申告をして精算します。
  • 前職の収入が転職先に知られる可能性はゼロではありませんが、実務上そこまで気にされることはほとんどありません。

最初に、前職の源泉徴収票を出した場合と出さなかった場合の違いを表で比べてみましょう。

項目出した場合出さなかった場合
前職分の年末調整転職先で前職分もまとめて計算・精算される転職先で年末調整が行われない。前職分・転職先分とも精算されない
確定申告原則不要(医療費控除など、別の理由がある場合は必要)必要(前職・転職先の源泉徴収票をもとに1年分を精算)
手間源泉徴収票を渡すだけ書類を集めて、自分で申告書を作成・提出する
還付・不足分の受け取り転職先の給与で精算される還付は申告後に指定口座へ振り込み。不足分は自分で納付
前職の源泉徴収票転職先に出す転職先に出さない転職先の年末調整で前職分もまとめて計算転職先では年末調整が行われない転職先で税金の精算が完了(還付・不足は給与で調整)前職分・転職先分とも税金が精算されないまま確定申告は原則不要翌年2〜3月に両方の源泉徴収票で確定申告※ 同じ年に転職した場合の流れです。医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は別途必要になります。
図1:源泉徴収票を出す場合と出さない場合の流れ

そもそも源泉徴収票の提出は義務なの?

まず気になるのが、「提出は絶対にしなければいけないルールなのか」という点です。

年末調整で前職の収入を含めて計算してもらうためには、前職の源泉徴収票が必要です。ただし、これはあくまで「年末調整をしてもらうために必要な書類」です。

国税庁は、前職の給与が確認できないときは年末調整を行えず、本人が確定申告で精算すると案内しています。つまり、提出しないという選択自体は可能ですが、その場合は転職先で年末調整が行われず、1年分の精算を自分でしなければならなくなります。ここが一番のポイントです。

根拠|国税庁の案内

国税庁のタックスアンサー「No.2674 中途就職者の年末調整」では、年の途中で就職した人に前の勤務先で支払を受けた給与がある場合、その給与を含めて年末調整を行う必要があり、前の勤務先から交付された源泉徴収票などで確認するとされています。確認ができないときは年末調整を行えず、本人が確定申告により精算することになります(根拠:所得税法190条・194条、所得税法施行令311条、所得税基本通達190-2)。

会社側(年末調整の担当者)の視点での扱いは、中途入社・退社した社員の年末調整はどうする?前職の源泉徴収票の扱い方で解説しています。

源泉徴収票を提出しないとどうなる?

提出しなかった場合に起こることを、順番に見ていきましょう。年の途中で退職・転職した場合の年末調整の全体像は、年の途中で退職・転職した年末調整はどうなる?【会社員向け】で解説しています。

転職先では年末調整が行われない

転職先の会社は前職分の給与を確認できないため、年末調整を行うことができません。「転職先の給与分だけで年末調整される」と思われがちですが、そうではありません。国税庁のNo.2674でも、前職分の給与が確認できないときは年末調整を行えず、本人が確定申告で精算すると案内されています。

この場合、転職先からは年末調整をしていない状態の源泉徴収票(転職先の給与分)が交付されます。転職先の給与から毎月引かれた所得税も、1年分としては精算されていない状態です。

翌年に自分で確定申告が必要

その結果、前職分・転職先分ともに所得税の精算が行われていない状態になるため、翌年に両方の源泉徴収票をもとに、自分で確定申告をして1年分の税金を精算する必要があります。生命保険料控除や扶養控除なども、年末調整の代わりに確定申告で申告します。

毎月の給与から引かれる所得税はあくまで概算のため、年末調整をしていない状態では納めすぎになっていることが多く、確定申告をすると還付になるケースが少なくありません。一方で、前職と転職先の給与を合算すると税率が上がる場合などは、追加で納付が必要になることもあります。確定申告が必要な人の考え方は、国税庁の「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」でも確認できます。

確定申告をしないと損になることも

確定申告が必要なのに期限までに申告しないと、本来納めるべき税金が不足したままになり、無申告加算税や延滞税といったペナルティの対象になる可能性があります。

一方で、年間の所得で精算し直すと税金が戻ってくるケースや、医療費控除など他の控除を合わせて申告することで還付が増えるケースも少なくありません。確定申告をしないままにしておくのは、損になりやすいというのが実情です。なお、還付を受けるための申告であれば、申告期間を過ぎても翌年から5年以内なら提出できます。

会社から提出を催促されることもある

会社側からすると「源泉徴収票が出てこない社員がいる」という状態になるため、年末調整の担当者から提出を催促されたり、確定申告が必要になる旨を案内されたりすることが一般的です。

ただ、提出しないこと自体を責められるというよりは、「では確定申告してくださいね」という事務的な案内で終わることがほとんどです。そこまで身構える必要はありません。

前職の収入は本当に「バレる」のか

前職の収入が転職先に知られる経路は、主に次の2つです。

  • 前職の源泉徴収票を提出した場合
  • 住民税の特別徴収額から推測される場合

源泉徴収票を提出すると前職の収入がわかる

源泉徴収票には、「支払金額(年収から非課税手当を引いた金額)」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」「扶養親族の数」などが記載されています。

とくに支払金額は、一般的にいわれる年収に近い金額です。そのため、提出すると年末調整の担当者には前職の収入がわかります。

住民税の特別徴収額から推測されることもある

もう一つは、住民税の計算の流れから、おおよその金額が推測されるケースです。

住民税は、前職の会社と転職先の会社がそれぞれ翌年1月末までに市区町村へ提出する給与支払報告書や、確定申告の内容をもとに、市区町村が両方の収入を合算して計算します。その結果が「特別徴収税額の通知書」として、5〜6月ごろに転職先の会社へ届きます。通知書の見方は、会社から届いた「住民税特別徴収税額通知書」の見方を従業員向けにやさしく解説で解説しています。

そのため、転職先の給与だけで計算した額より住民税が多くなっていれば、担当者が「前職の収入があるのでは」と推測することは、理論上は可能です。

前職の会社転職先の会社市区町村両社の給与を合算して住民税を計算転職先の担当者特別徴収税額の通知書が届く給与支払報告書給与支払報告書(翌年1月末まで)5〜6月自社の給与だけで計算した額より多い → 前職の収入を推測される可能性
図2:住民税の通知から前職の収入が推測される流れ

実際はそこまで気にされない

ただし、あくまで理論上は可能というだけです。年末調整の時期も、住民税の通知が届く時期も、担当者は多忙なため、一人ひとりの書類をそこまで細かく見ていることは少ないでしょう。私自身も、そこまで神経質になる必要はないと思います。

とはいえ、「知られる可能性がゼロではない」という点に抵抗を感じる方がいるのも自然なことです。そういう方は、次の項目で紹介する「自分で確定申告をする」方法を選べば、源泉徴収票を出さずに済みます。

自分で確定申告をする場合の手順

源泉徴収票を出さないと決めたら、翌年の確定申告に向けて、次の流れで準備を進めましょう。

1書類を集める前職・現職の源泉徴収票など2e-Taxの準備利用者識別番号マイナンバーカード3申告書を作成確定申告書等作成コーナーで入力4期間内に提出例年2/16〜3/15(e-Taxまたは書面)5還付・納付還付は口座に振込不足は自分で納付※ 令和8年分の申告期間は国税庁の発表で確認してください。還付申告は期間前でも提出できます。
図3:確定申告の手順の流れ

用意する書類

  1. 前職の源泉徴収票を用意する
    紛失した場合は、前職の会社に再発行を依頼します。届かない・もらえない場合は、転職したら源泉徴収票はいつ届く?もらえない場合の対処法も参考にしてください。
  2. 現在の職場から源泉徴収票をもらう
    前職の源泉徴収票を出さない場合、年末調整をしていない状態の源泉徴収票が、12月〜翌1月ごろに交付されます。確定申告では前職分と合わせて両方の源泉徴収票を使います。
  3. 保険の控除証明書を保管する
    生命保険や地震保険などに加入している人は、保険会社から届く控除証明書を保管しておきます。書き方は生命保険料控除・地震保険料控除の書き方【年末調整2026年版】証明書の見方も解説を参考にしてください。
  4. ふるさと納税の証明書を保管する
    ワンストップ特例が使えるのは寄附先が5自治体までです。6か所以上に寄附した人は確定申告が必要なので、寄附金受領証明書を取っておきましょう。なお、確定申告をする場合は、5か所以内でもワンストップ特例は使えず、すべての寄附を申告書に記載します。
  5. 医療費・市販薬の明細をまとめる
    年間の医療費が10万円を超える人(総所得金額等が200万円未満の人は所得の5%を超える人)は医療費控除、対象の市販薬の購入額が年間1万2千円を超える人はセルフメディケーション税制が使えます。この2つはどちらか一方しか選べません。セルフメディケーション税制は、一定の健康診断などを受けていることも条件です。医療費控除と確定申告の関係は、医療費控除は年末調整でできない?確定申告との違いをわかりやすく解説で詳しく解説しています。

e-Taxの準備と申告

  1. e-Taxを使う場合は、申告期間の前に準備をしておく
    利用者識別番号を取得し、マイナンバーカード(電子証明書)を用意して、確定申告書等作成コーナーで申告書を作成します。準備の流れは国税庁の「e-Taxご利用の流れ」で確認できます。書面で提出することも可能です。
  2. 申告期間内に申告する
    申告期間は例年2月16日〜3月15日です(令和7年分は3月16日まで)。令和8年分の正式な日程は、国税庁の発表で確認してください。還付申告は、申告期間の前でも提出できます。

転職先にはどう伝えたらいい?

「確定申告するので提出しない」と伝えておく

無言のまま提出しないでいると、年末調整の締め切り間際に担当者から催促の連絡が来ることになります。あらかじめ次のように一言伝えておくだけで、余計なやり取りを減らせます。

「前職の源泉徴収票は提出せず、自分で確定申告します。年末調整は不要です。」

理由を細かく説明する必要はなく、事務的な連絡で十分です。

不安な場合は税務署や税理士に相談する

確定申告の内容が複雑になりそうな場合や、控除の計算に不安がある場合は、税務署や税理士に相談するのも一つの方法です。確定申告書等作成コーナーにはチャットボットも用意されているので、ちょっとした疑問はそこで解決できることも多いです。

よくある疑問Q&A

Q1. 提出しないことで、会社から不利な扱いを受けることはありますか?

A1. 提出しなかったこと自体を理由に不利な扱いを受けることは、基本的にありません。会社側は「年末調整ができないので確定申告をお願いします」と案内するだけのケースがほとんどです。

Q2. 年末調整の途中で「出したくない」と言うのは失礼にあたりますか?

A2. 特に失礼にはあたりません。年末調整の担当者にとっても、確定申告に切り替える社員は珍しいことではないため、事務的に対応してもらえます。理由を詳しく説明する必要はありません。

Q3. 一度提出してしまったら取り消せますか?

A3. 提出後に「やはり年末調整をしないでほしい」と依頼することも可能ですが、会社側の事務処理の進み具合によっては対応が難しい場合もあります。提出前によく検討することをおすすめします。

源泉徴収票の悩み別早見表と、退職から確定申告までの流れは、こちらのまとめ記事で整理しています。

まとめ

前職の源泉徴収票を出さないという選択自体は可能です。ただし、その場合は転職先で年末調整が行われず、翌年に前職・転職先の両方の源泉徴収票をもとに自分で確定申告をして、1年分の税金を精算する必要があります。

前職の収入を知られたくない、という理由で出さない方もいますが、住民税の通知から推測される可能性もゼロではありません。手間と気持ちのバランスを見て、自分に合った方法を選んでください。

なお、2026年12月に実施される年末調整で変わる点は、【2026年12月改正】年末調整はどう変わる?知っておきたい3つのポイントを先取り解説で先取りして解説しています。

たかたん

この記事を書いた人

【運営者プロフィール】

▶ 2018年〜 介護系ソフトの勤怠・給与計算サポート業務
▶ 給与計算の資格を独学で取得
▶ 2022年7月〜2025年5月 給与奉行・法定調書奉行のコールセンター勤務
▶ 現在 独学で最新情報をアップデートしながら情報発信中

現場で数多くの「困った」に向き合ってきた経験をもとに、
わかりやすく・正確な情報をお届けします。

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